レーザー加工機ドットコムBLOG

拓大デザイン学科とのレーザー加工演習「つつみ」~後半組スタート

Looco代表取締役・王さんの講義

4月末からスタートした(株)LDF/FDAと拓殖大学デザイン学科アルバレスハイメ教授との共同演習(プロダクトデザインⅢ)。
22名の学生を前半と後半に分け、5月31日から後半組ががスタートしました。
今回はレーザー加工機を使った「つつみ」がテーマ。
容器やケース、バッグなどを企画する学生にあわせて材料は「革」を中心にして作品制作を行っています。

前半組同様、(株)LooCo代表取締役の王さん(拓大OB)による講義があり、学生による質疑応答も活発に行われました。
今回のブログでは、王さんの講義内容のまとめをご紹介します。


PDⅢ・拓殖大学工学部学科 アルバレス・ハイメ教授×LDF/FDA共同演習
「会社紹介・マーケティング・今回の課題「つつみ」について」

講師:王 偉忠さん【FDA理事・(株)LooCo代表取締役】

日 時:4月19日(水)13時50分~・5月31日(水)13時50分~(2回開催)
場 所:工学部棟演習室Ⅰ

Looco代表取締役・王さんの講義

Looco代表取締役・王さんの講義

(株)LooCoの本社は八王子にあります。
そして4月から八王子駅前にもお店がオープンしました。
僕は中国出身で、2009年に留学生として日本にきて2011年に大学に入学しました。ハイメ先生の前任であるFDA理事長の竹末俊昭元教授の研究室で、2013年に竹末先生と一緒に卒業(退官)しました。スマホケース等を作ってるメインの会社以外に美容業も経営しています。

どういうものを作っているか。
Amazonや楽天で販売しているメインはスマホケースです。これを開発・設計・製造・発送まで自社でやっています。

なぜ会社を作ったかという流れについてですが、大学で竹末先生に出会って、LDF(FDA)に出会って、レーザー加工機に出会いました。コンビニでバイトしてるときに雑誌でiPhone4が発売されたのを知り、専用ケースを作れないかなと思って2年生のときにケースを作り始めて1カ月で100万円の収入を超えるようになりました。

そこでバイトもやめたんですが、競争も激しくなってきたので、これを続けるのか就職するのかで悩んだ時期もあったんですが、レーザー加工機を使ってカスタマイズして名入れしたり彫刻したりしたことでうまくいって、ヤフオクをきっかけに楽天にも出して、在学中に起業しました。起業計画書をそのまま卒論にして卒業しました。

レーザー加工機はいま8台くらいあります。
ちなみに駅前の実店舗にも1台置きました。駅から2分くらいのところです。

売上については、年間数千万から十億まで伸ばしましたが、うまくいかないことも多くありました。

リアルなエピソードとして覚えておいてほしいことがあります。
1つ目のキーワードは「マーケット」。
これはつねに変わってるんです。いま作ったものがよくても1年後は使い物にならないものもあることを意識していただきたい。
うちは実際にマーケティングの変化を考えました。
2014年に会社を作って2015、6年はiPhoneは日本のシェアで一番多く売れたんですよね。10台中7台がiPhoneだったんです。しかし2017年で頭打ち。売れてくると競争が激しくなる。スマホケースを作っても売れなくなってきた。経営者としての決断が迫られます。

「マーケット」が本当にやっていけるかどうか。
データを調べて68.2%。これからiPhoneのシェアはどんどん落ちてくる。これからはアンドロイドが伸びてくるだろうと予測しました。
iPhoneメインで作ってたスマホケースをandroidメインに切り替えていこうと。

いまここに立ってるってことは、当たったということなんですよね。
いま45対55くらいの比率です。新商品の発売時期にもよりますが。そういうマーケットの変化を予測しなかったら、売れなくなってしまっていたと思います。

先読みして準備した方がうまくいく。
いま売れているものを真似しようとしても難しいんですよね。
負けるか品質や価格で勝たないといけない。
それならこれからくるものをやったほうがいい。
マーケットは常に変化してるので、社会に何がおきてるか予測しながらものづくりを考えていただきたい。

今日の2つ目のキーワードは「レッドオーシャンとブルーオーシャン」。
会社が儲かると参入が増えて競争が激しくなります。
レッドオーシャンは競争の激しさを示していて、簡単にまとめると、まだ起きてないこれから起きる可能性があるのはブルーオーシャン。

オンラインで買うときに検索しますよね。椅子を検索したときに椅子の商品の種類がいっぱいあるのはレッドオーシャンで競争が激しいということ。いろんな価格やデザインが豊富です。

たとえば、「ガムケース」で検索すると3種類しかなかったとする。3商品の中から選ぶしかないとなると競争がないので、ここから選ぶしかないけど、ここから分散してレッドオーシャンになっていくこともあります。
人気の商品は必ずこういうことが起こるんですよね。

レッドオーシャンの中にも探せば、まだブルーオーシャンが少し残っていることもあります。たとえばスマホケースでいうと、メチャクチャジャンルはありますが、「手帳型」「本革」とか絞っていくと、少なくなるところがまだまだたくさんあるんでそこを調べていくという作業がマーケティングです。

そして、調べたら、いったんそれを忘れてほしい。ものづくりってこういう流れなんですよっていうのがあるので、その過程を一回経験して失敗したら、また考えて作ればいいと思うんです。
商品開発というのは、うちの商品はこういう視点でモノを開発してますよってのを覚えていってもらえればいいと思うんです。
「セグメント」と言ってもいろんなのがあるんですよね。
うちはまず価格です。スマホケースに対する価値観はみんな違うんですよね。
千円までしか出さないという人もいて。
マーケットを調べると千円の商品はいっぱいあるけど、3千円の商品はあんまりないなというところを突っ込んでいく。意外とそういうところが大事です。
原価よりも売価の方がお客さんは敏感なんです。
みなさんも買い物したときに、安すぎてちょっと品質が不安になるみたいなことありませんか。これを本当に500円で買っていいのかな、みたいな。
売る側としては安くした方がいいだろうと思うんですが、実は買う側の気持ちとしては違うんですね。買う側は3千円はどんな品質なんだと。いますぐ価格のことを考えろとはいいませんが、ものづくりというのは値段のことを考えなきゃいかないものです。
もちろん材質のこともありますが、いくらで売るかっていうことより、お客さんがいくら払えるかってのを考えてもらいたい。

あと、消費者の年齢ですね。若い人たちは鮮やかな柄のデザインの方がいい。年配だと落ち着いた方がいいと分かれてきたりします。
面白いエピソードがあって、若い人はあんまり手帳型カバーを使わない。もちろん使ってる人もいますが、店舗でも販売していると、ベルトがついてるようなデザインのムチャクチャ古くてださいなって辞めたデザインのカバーを、年配の方がいいと言ってくることがあります。こういうことは、結構考えさせられることが多い。

私たちデザイナーとして、自己満足で終わってませんかというのがある。
本当にユーザーの声を聞いてるか。年配の人こそ不安なんですよ。
ちゃんとカードが収まっているか、グラグラするのが嫌でバンドで止めたいとか。お客さんの層によって求めているものが違うんです。

ものづくりは自己満で終わっちゃうことが多いので、本当に役に立つのかっていうのを考えてもらいたい。

僕もけっこう実店舗にいておばあさんに相談をされて勉強になることがあります。お店をつくったのも本当の声を聞きたくてということもあります。ケース1個2000円売るのに1時間かかっちゃったりして儲からないんですけど、お客さんの声を取り入れてものづくりをやっている感じがあります。そういうことをみなさん、気にしていただきたい。

それから、スマホの今年流行ってるのは、首や肩からぶら下げるやつです。こういう用途を考えて、こういう風に使うんだろうなっていうのを考えるのも大事。あと付加価値(名入れとか)ですね。スマホケースの+α。

あとはギフトサービス。
たとえばみなさんが何か買いに行くときに、予算は3000円だった。そこで、3500円の商品があった。結構悩みますよね。これがギフトの場合だと、彼女や彼氏にあげたいとう場合、結構財布のひもが緩くなっちゃうことがあります。ケチらないですよね。ギフトじゃないのは1000円なのに同じ商品でもギフトになると2000円でも買ってしまう。
ギフト需要というのは増えてきていると思います。
ものづくりとしてはそういうジャンルもありなんではないかと。皆さんも何かを作るときにちょっと考えてみてください。「自分が作るものは誰かにプレゼントできるものになるといい」というようなことを。

マーケティングの話は、ちょっと難しいんですが、まとめます。

商品やサービスが売れるような仕組みを考えないといけない。それはまだこれから社会に出ていろいろ覚えていかなきゃいけないんですけど。
マーケティングは、まず「サーチ」マーケットを調べることですね。そのうえでアクションを起こす。
そのあと必ずクライムアフェアがおこるので。失敗したり、やり直したり、戻っちゃうんですよね。最初のところに。勝算をあげることがマーケティングなんです。

今回の課題で失敗したと思っても、次回につながればいいのかなと。課題につながりますが、うちも近年スマホポーチというのを作っていて、大ヒットしています。スマホポーチ自体が新しい。スマホを出し入れしやすいように作ったんですが、狙いが的中してヒットしています。入れるモノはデザインによって変わる。何を入れるのか。誰が何をどう使うのかというのを考えるとアイデアは出てくると思うんですよ。

今回の課題の「つつみ」は日本語で考えると難しくて。中国語にすると分かりやすいです。

➀钱包=財布
➁书包=ランドセル
➂公文包=アタッシュケース
➃革包=革のケース

何をつつむかを考えてほしい。
いつ、だれ、何をつつむか考えてほしい。

みなさんの作品の中からいいなと思うような作品があれば、商品開発しちゃうかもしれない。ネットやお店で販売してみなさんにもインセンティブ入っちゃうかもしれません。夢がふくらむようなこともあるかもしれません。会社の社長としてお約束しますので。

先ほどキーケースの話ありましたが、うちでも色々つくっていて、革の使ったキーケース。革は柔らかいから開け閉めは簡単ですが、造形は難しいんですよね。そんなときは、私は写真(以下)を作ったんですよ。こういう造形って革で難しいので、車のキーをレーザーで中身を切って注文に合わせて作れる。日産にも導入していただいています。

LooCoのキーケース。レーザーでキーにあわせてくりぬく。

LooCoのキーケース。レーザーでキーにあわせてくりぬく。

【質疑応答】

学生「王さんの会社では、王さんが主体で商品のデザインを考えてるのでしょうか」

王さん「会社にデザイナーもいるので、僕主体というのはほとんどやりません。これを作ろうっていうときにいくつかアイデアが出てきて、伸ばしてみて、選定したり。アイデア出しは僕も参加するんですが、スタッフの皆さんに参加してもらって、できるだけ意見を集めて方向性を定めます。アフターサービスにデザイナーもきてもらって、お客さんから情報をもらってます。ポケットが5つほしいという要望があった場合、無理かもしれないけど、実現可能かどうかの方向性の話し合いができるようように」

学生「マーケティング、ネットの情報を取り入れる手段はありますか」

王さん「情報サイトとかで集めるとか、ニュースアプリが結構出てるんでまずそれをやってます。もうひとつは、店に結構行くんです。お店で何が売れてるのか、お客さんが何に反応してるのかを見ています。
この段階で言っていいのかわからないけど、あんまり調べすぎてもよくないなと思います。やっぱりデザインって正解と不正解の判断は難しい。その考えを誰かに共感してもらえればいい。もちろん何が流行ってるか等の情報ベースはほしいけど、自分の主張は考えておいてほしい。どこかで見たというのではダメ。こういうものがくるだろうということを考えておいてほしい。
うちはスマホデザインで50種類あります。不人気商品もありますが、ずっと愛用しているユーザーがいるのであればいいという考え方もあります。
自分の個性は忘れないようにしながら、自分なりに正しいか判断できる基準を作っておいてほしいですね。学生のうちに色々失敗してほしい。一発で成功することはないので」


ハイメ教授「中国人として日本の市場の良さはありますか」

王「日本で楽天やamazonの上層部と仲良くさせてもらっていて、日本の中小企業にECとはこういう風にやるんだというのを教えています。そこで共通しているのは日本の企業って自信のなさが伝わる。控えめというよりも自信がなくなってきている。それと若い人たちもそうですが、中国やアメリカに比べると野望がある人が少ないんですよね。中国、アメリカ、日本と比べると、日本は起業する人に対してやさしいんですよね。世界一やさしい。でも起業する人は少ない。アメリカの方がもっと厳しいのに起業する人は多い。日本は技術もあるし環境もいいのにもったいない。仮に起業して失敗しても再就職すればいいじゃんて思うんですけど。中国なんか2回目のチャンスもほとんどなくて、へたすれば一生借金を背負っていかないといけない人たちもいる。僕は税務署と喧嘩もしたこともあるけど、基本的にこちらをフォローしてくれる。あと、デザインに関しても日本人は細かはいこと考えるじゃないですか。技術もあるし。ただ売るのがアメリカや中国に比べると下手。中国でライブコマース流行ってるのに日本が追い付いてないとか、amazonのプラットフォームが日本で通っちゃったりとか。日本はどうしても国内の視点で考えてしまい、グローバルな目線で考えてない。EC化率については、中国は約40%、アメリカはたぶん30%くらい。日本はコロナの中であれだけ家を出るなって言われて10%です。これがコロナ終わったら8%になります。それは遅れてるということじゃなくて、現状の中で国際的な売り方をやらないと。オンラインが一番世界につながりやすいから。
中国は、学生もPCを使いこなしてって思いますね。日本の学生の方がPCを使いこなせてない人が多く感じますね。
みなさんいい環境に恵まれているのに、もったいないなと思います。勇気を出して失敗してもいいと思います。全力で応援したいですね。

U-suke(FDA)「レーザー加工機の良さ、おもしろさってなんですか」

僕が買ったときといまでは使い方も変わってきていますね。
昔は名入れするとかそういう何かを加えるツールだと思ってたんですけど、ECって個人でも作れる世界に5年後くらいにはなると思うんです。自分で商売できる世界。レーザーとか3Dプリンターとかはもっと普及すると思うんですよ。レーザーは切断、切る、彫るなんですが、いいところは手軽に使えるというところ。道具のよさ、使いやすさがあがってる。使い方次第でいろいろできる。
たとえば、レーザーでカットしてくりぬいたり。うちで販売しているスマホとか全部レーザー使ってますからね。カットして貼るみたいな。
もともと100%完成して売るんじゃなくて、90%完成してあと10%残して日本にもってきて八王子工場でやる。そういうことをレーザーではやれる。受注生産できるし、大量在庫する必要ないしバリエーションも増やせるので使いやすいです。
使い方次第でビジネスチャンスはまだまだあると思います。

講義終了後、学生たちに起業についてのアドバイスを求められる王さん。

講義終了後、学生たちに起業についてのアドバイスを求められる王さん。

講義終了

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以下、前半組の課題制作の様子を紹介します。

革を使って加工する前にEVAをレーザーでカットし、試作する学生。

革を使って加工する前にEVAをレーザーでカットし、試作する学生。

ハイメ教授と王さんに試作品のアドバイスを受ける学生。

ハイメ教授と王さんに試作品のアドバイスを受ける学生。

レーザー加工機を操作して革をカットする学生。

レーザー加工機を操作して革をカットする学生。

レーザー加工機でカットした革を専用の針と糸で裁縫する学生。

レーザー加工機でカットした革を専用の針と糸で裁縫する学生。

プレゼン用に写真撮影。

プレゼン用に写真撮影。

なお、前半組と後半組合同の最終発表は、7月19日(水)となります。
そこでLooCo賞、LDF賞、FDA賞の贈呈を行う予定となっています。
また経過についてはブログで随時ご紹介します。

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